Tristar (L-1011)とPower Station
紅海の深淵に眠る「空の貴婦人」と「蒼の壁」:Tristar (L-1011)とPower Station
アカバには航空ファンをも唸らせる巨大な沈降機と無限の深淵へと続くドロップオフがある。ここではその対照的な魅力を紹介する。
1. Tristar (Lockheed L-1011):海底に横たわる「空の貴婦人」
歴史と背景
このスポットの主役は、かつて300人以上の乗客を乗せて空を飛んでいた大型旅客機Lockheed L-1011 TriStar。
設置の経緯: 2019年、アカバ経済特区庁(ASEZA)によって人工魚礁として沈設された。単なる観光資源としてだけでなく、近隣の天然サンゴ礁へのダイビング圧力を軽減して新たな海洋生態系を育むための戦略的な環境プロジェクトの一環である。
機体の数奇な運命: この機体は1980年代に製造され、ロイヤル・ヨルダン航空やポルトガルのTAP航空などで活躍。その後アカバのキング・フセイン国際空港に長く放置されていたが、沈設によって「海底の博物館」として第二の人生を歩み始めた。
構造と深度
- 最大深度: 約28m(機体上部は約15mから)
- 難易度: 中級者以上(Advanced Open Water推奨)
- 透明度: 非常に良好(20m〜30m)
- 特徴: 全長約50m、翼幅も約50mという圧倒的なスケール。沈設前に有害物質は全て除去され、ダイバーの安全のために座席の一部やドアも取り外されている。
見どころ
- 垂直尾翼のエンジン潜入: L-1011特有の第2エンジン(尾翼部分)から機内へエントリーできるのは世界でもここだけの体験。
- コックピットの遺構: 操縦席には当時の計器類が一部残っており、パイロット気分で記念撮影が可能。
- 生命の息吹: 沈設から数年が経過し、機体にはソフトコーラルが付着し始めている。エンジンの隙間を住処にするミノカサゴや機体周辺を回遊するバラクーダの群れが見られることもある。
2. Power Station:紅海の心臓部へ続く「蒼の壁」
歴史と背景
名前の由来は地上にある発電所の近くに位置することから。人工物の「Tristar」とは対照的にここはアカバで最もダイナミックな自然の造形美を楽しめるポイント。
- なぜ設置されたのか: ポイント自体は自然地形ですが、かつてヨルダンとエジプトを結ぶ海底電力ケーブルが敷設された場所でもある。現在も水深6m付近にはそのケーブルが通っており、歴史的なインフラと自然の共生を垣間見ることができる。
構造と深度
- 最大深度: 5mから200m以上(無限の壁)
- 難易度: 初級からテクニカルダイバーまで
- 透明度: 抜群(30mを超えることも多い)
- 地形: 水深5〜20mのなだらかなサンゴのプラトー(高原)を抜けると、一気に垂直に切り立つドロップオフが現れます。
見どころ
- 「ブルーホール」を彷彿とさせる浮遊感: 壁沿いに潜ると、下から湧き上がるような上昇気流や、どこまでも続く深い青(Aqaba Blue Holeとも呼ばれる)に包まれる独特の浮遊感を味わえる。
- 大型回遊魚との遭遇: 深場からの潮流が入るため、ナポレオンフィッシュやウミガメ、運が良ければジンベエザメやリーフシャークなどの大物が出現する。その確率がアカバで最も高いエリアである。
- 夜の「スペインダンサー」: ナイトダイビングでは、燃えるような赤色の巨大なウミウシ「スペインダンサー」が優雅に舞う姿を見られる。
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